西暦2276年。地球と近隣惑星間の往来が日常となり、異星人との交流が当たり前の時代。太陽系通信管制センターに勤務する橋本理子は、通信解析の専門家だった。
その日、理子の端末に異常な電波信号が届いた。通常の通信プロトコルからは逸脱した、不可解な電波パターン。理子は慎重に信号を解析し始めた。
信号は、一見無秩序に見えながら、微妙な規則性を持っていた。まるで言語のような構造を持ちながら、どの既知の通信方式とも異なっていた。
「エイリアン・コミュニケーション・プロトコル」と名付けられたこの信号は、惑星間通信審査委員会の専門家たちも解読不能と判断した。
理子は、自身の最新の量子通信解析アルゴリズムを使い、信号の本質に迫ろうとした。日夜、膨大なデータと向き合う。
そして、ある夜。見抜いた。
信号は、実は地球そのものからのメッセージだった。未来の地球が、過去の自分たちに向けて送った、膨大な情報の断片。
しかし、その目的は何か?
解析を進めるうち、理子は恐ろしい真実に気づいた。この信号は、地球が直面する未知の脅威への警告だった。しかし、それを完全に理解するには、まだ何かが足りない。
最後の解析データを処理した瞬間、理子の周囲の空間が歪み始めた。端末の画面がゆらゆらと波打ち、部屋全体が光り始める。
そして、理子は理解した。
彼女自身が、その信号の最後の、そして最も重要なピースだったのだ。
通信センターの壁が溶けるように消え、理子の目の前に広がったのは、まったく別の世界。それは地球でも、現在の太陽系でもない、何か別の場所だった。
信号の最後のメッセージが、彼女の脳裏に浮かんだ。
『あなたは、選ばれし伝令。』
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